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後期展示について

後期展示「うつくしいくにのはなしⅢ 理想郷」

 早いもので本日11月1日、郡山での前期展示の4週間を終えようとしています。遠くから足をお運び頂きましたこと、また福島県内の美術関係者の方々や トトノエル gallery cafeに集う多くのお客様に、写真・映像作品をご覧頂けたことを心より御礼申し上げます。準備休業の後、11月4日(土)より始まる後期展示では、作品も一新しよりはっきりとFUKUSHIMAという場所性を掲げた写真を展示いたします。

2023-03-30 13:45/富岡町夜ノ森駅前

 常磐線夜ノ森駅前に残る「ゲームセンター理想郷」の看板。自分はこれに「ユートピア」と仮名をふり、今回の展覧会のタイトルを「うつくしいくにのはなしⅢ 理想郷ユートピア」としました。黄色く朽ちてゆく「理想郷/ユートピア」はまた、FUKUSHIMAを象徴する風景だと言えるでしょう。

 2020年3月、常磐線は全線開通を果たしました。帰還困難区域で、不通区間だった夜ノ森駅、大野駅、双葉駅で列車の運行が可能になったのは、国が定めた特定復興再生拠点区域という制度によります。各々の駅前を中心に除染を行い、居住可能な区域を作るものです。もちろんそれは2020年(実際の開催は2021年になったが)の東京オリンピック開催に向け、福島の「復興」をアピールする意図がありました。

2023-03-30 13:30/富岡町夜ノ森

 今年2023年3月、開通から3度目にして初めて有名な夜ノ森(富岡町)の桜街道を訪れました。賑わう桜並木から通りを一本中に入ると、人気のない住宅地に静かに咲き誇る桜の木があります。私たちの「うつくしいくに」の理想郷ユートピアに迫ります。

 展示は上記の夜ノ森で撮影した2点と、2021年と2022年の楢葉町の海辺の風景に、常磐線が竜田駅まで開通した2015年当時のそれを加えた大型の写真計5点と、戦争の世界を憂い、「レモン」というタイトルの小品を2点ほど加えて展示したいと考えております。皆様のお越しを心よりお待ち申し上げます。

2022-07-10 05:26/木戸川河口

2016-05-11 14:46 レモン

やっとそれはでき上がった。そして軽く跳りあがる心を制しながら、その城壁の頂きに恐る恐る檸檬を据えつけた。そしてそれは上出来だった。 −梶井基次郎 

「檸檬」は、梶井基次郎(1901年〜1932年)の代表作であり、多くの人に愛される珠玉の逸品だと言えよう。自らを抑圧する得体の知れない「不吉なかたまり」が、果物屋で手にした檸檬ひとつによって解放されるという短編小説で、1925年(大正14年)、梶井が手がける同人誌『青空』の創刊号巻頭に掲載されている。丸善の書棚から取り出した色とりどりの洋画集を積み重ね、その「頂き」に鮮やかなレモンイエロウの爆弾を仕掛ける、というやや子供じみた夢想に遊ぶ梶井の心象世界は、「不吉な塊」が充満する梶井自身の、そして移りゆく時代の日常に、はっとするような色彩を炸裂させる。

「Lemon」より

うつくしいくにのはなしⅢ 理想郷(ユートピア)
中根 秀夫 /写真

  • 後期|2023年11月4日[土]〜11月29日[水]
    (前期は11月1日[水] まで)

12:00 ~ 18:00  木・金曜は休廊します 

トトノエル gallery cafe 
〒 963-8035 福島県郡山市希望ヶ丘 1-2 希望ヶ丘プロジェクト内
tel. 024-901-9752 駐車場3台あります


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