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展示のための試論

Lemon 2016-05-17 08:05

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やっとそれはでき上がった。そして軽く跳りあがる心を制しながら、その城壁の頂きに恐る恐る檸檬を据えつけた。そしてそれは上出来だった。
−梶井基次郎

 梶井基次郎(1901年〜1932年)の「檸檬」[1]は梶井の代表作であり、多くの人から愛される珠玉の逸品である。自らを抑圧する得体の知れない「不吉な塊」が、果物屋で手にした檸檬ひとつによって解放されるという短編だ。1925年(大正14年)、自ら手がける同人誌『青空』の創刊号巻頭に「檸檬」は掲載される。丸善の書棚から取り出した色とりどりの洋画集を積み重ね、その「頂き」に鮮やかなレモンイエロウの爆弾を仕掛けるという、やや子供じみた夢想に遊ぶ梶井の心象世界は、「不吉な魂」が充満する梶井自身の、そして移りゆく時代の日常に、はっとするような色彩を炸裂させる。

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