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ちいさなくに/木戸駅と

くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである

川上弘美 「神様 2011」

2015年 6月28日 日曜日

 楢葉町は、福島第一原発20キロ圏内では比較的線量が低く、避難指示解除準備区域となっている。線量も低く、2014年6月には、常磐線広野〜竜田駅間の運行が再開した。今、再びこの美しい土地を訪ねてみようと思ったのは、政府の原子力災害現地対策本部が、お盆前に避難指示を解除する方針を掲げ、住民との話し合いが持たれているとの記事(福島民報 2015年6月18日付)を読んだからだ。除染で出た放射性廃棄物は、黒いフレコンバッグ(フレキシブル·コンテナバッグ)に入れられる。持参した線量計の数値は意外なほどに低い。

 細い雨が降る。日曜日だが人影はほとんどない。除染の作業も今日はお休みだ。かろうじて家の外観を保っている住居。深く刻まれた津波の爪痕にカメラを向けることができなかった。津波に耐えた木々。目と鼻の先の海。激しい波がテトラポッドの浜に寄せ来る。車止めの赤いコーン。その先の。

 雨が少し強くなってきた。車に乗った住民の方に呼び止められた。飼っている鳩に餌をやるため数日おきに自宅へ戻って来るという。同じ地区でも彼のように僅かの差で津波の被害を免れた人もいる。自宅のリフォームも終わり、いつでもここに戻る準備はある。だが同時に、インフラ整備もままならぬまま、瓦礫の撤去と帰還とを並行して行うという状況に不安を感じてもいる。

 車で木戸川橋の手前まで送ってもらった。津波はこの川をも駆け上った。

 信号機は動いており、時折すれ違う車の中から視線を感じる。小高い丘を登ると広い公園で、そこから木戸川を挟んだ前原地区の広大な仮置き場が確認できる。積み上げられた黒いフレコンバッグはシートで覆われている。遠くに見える煙突は東京電力の広野火力発電所。原発事故後、東京は福島から電気が供給されていたことを知る。今も稼働中だ。 

冊子「ちいさなくに/木戸駅と」は、トトノエル gallery cafe他、銀座のギャラリーナユタで取扱しております。中根のサイトからも購入できます。

うつくしいくにのはなしⅢ 理想郷ユートピア
中根 秀夫 /写真

後期|2023年11月4日[土]〜11月29日[水] 
12:00 ~ 18:00  木・金曜は休廊します 

トトノエル gallery cafe 
〒 963-8035 福島県郡山市希望ヶ丘 1-2 希望ヶ丘プロジェクト内
tel. 024-901-9752 駐車場3台あります


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