in ten years/風景論のために
本稿は『ちいさなくに/木戸駅と』(2021年)、『うつくしいくにのはなし/』(2023年)に続く、三つ目の手記集である。東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から今年で14年目となる。
2023年10月から11月末まで、福島県郡山市内のカフェギャラリーで個展を開催した。そこで「震災から10年」という言葉では括ることができない「浜通り」の現在/現実を知ることになる。「やり残したこと」をやるべきではないか。漠然とそう考えていた。その年の12月、翌2024年4月と6月の計3回(実質的には4往復)「浜通り」を訪ねた。今回は富岡駅を起点にし、同町のもうひとつの駅である夜ノ森駅へ、そこから第一原発から最も近い大熊町の大野駅へ、それから6年ぶりの訪問となる浪江駅から双葉町の「復興祈念公園」予定地、さらにはいつもの木戸駅へと「浜通り」の広い範囲を遊歩した。
震災と原発事故の当事者ではなく、しかし同時に福島から送られて来る電気を無自覚に消費し続けた方の当事者として、この土地を通して考え続けること、美術家としてその事実に自覚的であり続けること、「傷」や「痛み」について何度でも問い直すこと、他者の悲しみに寄り添うことの「不可能性」について考えること。そこに新たなる「風景論」の地平が開かれるであろう。
in ten years/風景論のために
in ten years / for the theory of landscape
[著者] 中根秀夫
[編集・デザイン] 中根秀夫
[発行] 2025年3月1日
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[商品仕様] A5中綴じ片観音表紙 36ページ
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