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木戸駅と

7月に1時間ほど(つまり次の電車の発車まで)周辺を歩いた。それで気になっていたのが駅前に建てられたホテルだ。2018年にオープンした「バリュー・ザ・ホテル楢葉木戸駅前」は、ビジネスホテルというよりは2階建の合宿所のようだ。ネットで調べると、「バリュー・ザ・ホテル」グループは宮城県に本社を置くホテル運営会社で、宮城県に4軒、福島ではここ木戸駅前と広野にホテルを持つ。1店舗目の仙台名取店の開業が2012年だから復興関連需要を見込んだ、おそらく過渡的な運営形態なのだろう。

これまでに5回、双葉郡楢葉町のこの地区を訪ねている。いつもはいわきのビジネスホテルに宿泊するのだが、ここならば1日に11便しかない電車の発車時刻を気にせず、ゆっくりと時間を過ごすことができる。料金は一泊2食付きで7900円。駅前には飲食店も無く、一番近いコンビニまで車で5分だから、「夕食付き」のオプションはとても助かる。日焼けした作業員風の一団と管理職風の人たちが食堂にいる。

ちなみに今日の夕飯メニューは、メインのハンバーグとバイキング形式で給される付け合わせ各種、ご飯、味噌汁、コーンスープ。まさにアットホームな合宿所。観光ホテルではないの「地の魚」とかそういうものではない。

ホテルを出て、国道6号線に向かって少し歩くと、新しいクリニックと接骨院の看板が出ている。昨年3月に来た時はまだ壊れた家屋が残り、日中の人影はほとんど無かったのだが、この場所で住民の新たな生活が始まったように見える。そういえば、気になっていた駅前の「地元風情」の理容院が再開していた。やや日に焼けたサインポールが勢いよく回転する。

看板が取り外された建物があった。敷地内こそ丁寧に草が刈られ整備されているが、おそらくもう使用されることはないだろう。望遠レンズで覗くと「楢葉南保育所」と見える。

要するに現在のこの地区の住民はみな高齢者なのだ。避難先で新しい生活を始めた子供を持つ若い夫婦が「ふるさと」に戻ってくるのはいつの日だろうか。楢葉町で原発事故に伴う避難指示が解除されたのが2015年9月のこと。ここに至るのは決して短い時間ではないのだ。

震災から8年目となる今年3月、福島県から自主避難した人への家賃補助が打ち切られたのが話題になったが、どこかで線引きをするにせよ、住民の方に寄り添ったきめ細やかな政策決定が必要なはずだ。ましてや避難指示の解除時期は地域によって差がある。心の持ちようというのがある。一律に期限を切ったとしてそれが真の復興に近づくのだろうか。

  • 河北新報(2019年5月13日)自主避難者「行き場ない」 都内の国家公務員宿舎退去期限 福島県支援打ち切り、家賃は2倍に

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